鑑真和上の像

屋根の曲線がなんとも言い難い美しさを示す唐招提寺。そこにある鑑真和上の像は、日本最古の肖像彫刻らしい。仏教を最初に伝えた人であるから当然かもしれない。昨日、興福寺八部衆十大弟子像が乾漆像であることを書いたが、鑑真和上像も乾漆像である。ただ、興福寺の像は表面がなめらかで、へらを使ったものと考えられるが、鑑真和上の像は表面に凹凸があり、これは指で作っていったとしか考えられないらしい。おそらくプロの仏師が作ったのではなく、弟子たちが作ったのではないかと考えられている。乾漆像は、基本的に漆と麻布からなり、手で塗るとまず手がかぶれるはずである。実は鑑真和上像には平城京にあった楡の木の皮を粉にした成分がかなり含まれているようで、漆の濃度は薄いようだ。昔の人の知恵はすごい。鑑真は西に向かって結跏趺坐の姿で亡くなったといわれており、和上坐像はその臨終の姿だという説がある。おそらく鑑真を敬い慕う弟子たちがその姿を自分たちの手で残したいという気持ちから作られたのではないかとも考えられている。かなりその説はあっているんじゃないか。そのようなことを考えながら実際の和上坐像をまたみてみたい。